医学教育の展望:
医学教育を国際基準で評価し、質を高めていく
(前編)

医学教育はいま、大きな変化の渦の中にあります。臨床研修必修化はもちろん、医学研究の成果や新しい技術の開発に伴い学習内容は増加し、新しい取り組みがどんどん進んでいます。そんな医学教育の展望を開く最前線の試みをシリーズで紹介します。

現在、日本医学教育評価機構(JACME)によって、各大学の医学教育の第三者評価が行われているのをご存知だろうか。

いわゆる2023年問題*によって、日本でも国際基準に照らした医学教育の質の保証を求められるようになった。そこで、その評価を担う母体として設立されたのがJACMEだ。今回は、その常勤理事である奈良信雄先生にお話を伺った。

学生の参画の形骸化を防ぐために

JACMEは、世界医学教育連盟(WFME)のグローバル・スタンダードに準拠した日本版評価基準を作成し(図)、その基準に基づいて、各大学のカリキュラムや教育プログラムを評価している。評価員が実際に大学に出向き、教員や学生にインタビューを行ったり、施設や講義の様子を見学したりするのだ。

「評価基準の中では、学生が医学教育に参画し、意見を述べているかどうかが特に重要視されています。しかし、『学生が医学教育に参画するといっても、形ばかりになるのではないか』と心配する声も聞かれます。ですから私たちは、大学のカリキュラム委員会や教務委員会で、学生がしっかり意見を述べることができているか、その意見が実際に改善に結びついているかといった点まで、丁寧にチェックしています。参画状況を学生から聴き取るだけでなく、学生が参加する会議の議事録を読むこともありますね。」

国際基準を用いた評価で、医学教育の充実を図る

とはいえ、医学部のカリキュラムやプログラムは、教員の専門分野や大学が掲げる教育方針によって様々だ。医学のような専門性の高い分野の教育を、第三者機関が評価することは、果たして可能なのだろうか。

「私たちは、大学が工夫して作ったカリキュラムやプログラムの内容そのものを評価しているのではありません。カリキュラムやプログラムが作られる過程や、それを評価し改善していく仕組みが整っているかどうかを、国際基準に基づいて客観的に評価しているのです。また、評価基準に満たない項目について、こちらから直接改善案を押し付けるようなこともありません。評価を受けてどのように改善していくかは、各大学に委ねられています。」

こうした客観的な評価が、ひいては日本の医学教育の質の底上げにもつながると奈良先生は指摘する。

「私たちは、日本の医学部卒業生に米国医師国家試験の受験資格を得てもらうためだけに評価を行っているのではありません。評価を通じて日本の医学教育全体を充実させていくこと、また日本の医学教育の質の高さや長所を国際的に発信していくことを目的としているのです。」

 

 

*2023年問題…2023年より、ECFMG(米国医師国家試験受験資格審査NGO団体)に米国で医師になるための申請をする際の条件として、アメリカ医科大学協会または世界医学教育連盟の基準による認証を受けた医学部を卒業していることが必要になる。

 

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