
北里大学病院薬剤部(臨床薬剤師)友田 明子さん
処方せんを通して患者さんを「みる」

「医師や看護師など、病院で臨床に関わるほとんどの職種は、直接患者さんや病気をみていると思うんです。でも私たち薬剤師は、先に処方せんを見て、薬を通して患者さんの状態を推測したり、医師の診断や見立てを想像するところから入るんです。」
そう話すのは、北里大学病院でNICUなど小児系の3病棟の臨床薬剤師を務める友田明子さん。取材時も、病棟に足を運んで看護師や医師と盛んにコミュニケーションを取っていた。
「私たち臨床薬剤師の業務は、担当する患者さんがどんな薬を処方されているかを把握し、患者さんの体格や年齢などから薬の成分が体内でどのように動いているか(薬物動態)を計算し、薬学の観点から適切な介入をすることです。チームの一員として医師や看護師と常に情報交換・情報共有を行うのはもちろん、私の場合は小児担当なので家族への服薬指導がとても多く、とにかくコミュニケーションがメインの仕事です。」
臨床現場で密接な連携はとるものの、常に客観的な視点を失わないように意識している。処方する医師に思い違いはないか、たくさんの処方薬の中で併用すると効き方に影響があるものはないか――このように様々な視点から、処方される薬をチェックし、必要に応じて疑義照会(医師への確認)を行うのは重要な任務だ。そこに必要なのは、医師との信頼関係となる。
「朝の病棟回診にも、先生たちと一緒に参加しています。主治医が患者さんをどうみているのかを理解した上で、必要に応じて疑義照会や情報提供をしないと信頼してもらえません。あとは、薬のことを聞かれたら、とにかくちゃんとエビデンスに基づいた答えを返すことですね。以前、『日本では添付文書等に投与量が載っていない薬を小児に投与したいが、どのくらいの量がいいのか?』と相談を受けたときは、論文や海外での使用例などを徹底的に調べました。」

薬の量や薬物動態について何でも相談してほしい
専門的な相談に答えられる背景は、大学でしっかりと生化学や薬物動態を学んでいること。
「体内で薬がどのように作用するか、複数の薬がどのように相互作用するか――といったことを、横断的に考えられるのが私たち薬剤師の強みです。例えば、薬の添付文書には1日4回処方と書いてあっても、薬の代謝や血中濃度を計算して『1日3回の投与でも大丈夫です』と回答することもあります。このように、薬の選択や投与量に関する相談を受けることも多いです。医学生のみなさんも、実習中に疑問に思ったことなど何でもいいので、薬剤師に聞いてみて下さい。私たちを信頼して活用すれば、医療をより良くすることができるはずです。」
※この記事は取材先の業務に即した内容となっていますので、施設や所属によって業務内容が異なる場合があります。



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