
「一人前」だと思えたのは
病院を回って経験を積んだ10年目ぐらいの頃
【産婦人科 番外編】宮本 純孝医師
(さいたま赤十字病院 産婦人科)-(前編)
卒後20年の先生に、10年目ごろを振り返りながら話していただきました。
何でも診られる産婦人科医

――産婦人科に入局しようと思った動機は何でしたか?
宮本(以下、宮):学生時代に打ち込んでいた軟式テニス部の顧問の先生が産婦人科の教授だったんです。病院実習のときに分娩を見て感動したこともあって、そのまま大学の産婦人科に入局しました。
はじめは産科をやろうと思っていたんですが、卒後2年目に大学院に入ったとき、担当教授から「女性ホルモンと骨粗しょう症の関係」という研究テーマを与えられたんです。やってみたらこの研究が面白くて、更年期障害やホルモン補充療法といった分野に深く関わるようになりました。
――大学院を出られてからは、どのようなキャリアを積みましたか?
宮:臨床に出てからも、「専門は婦人科系の更年期あたりかな」という意識でいたんですが、最初の年に来たこの病院が、お産もがんも救急もあるっていう、まさに産科の最前線という感じの病院だったんですよね。そんな環境で様々な患者さんと接するうちに、「何でも診られるドクターになりたい」と思うようになりました。
その後、群馬県内の系列病院を1年ごとに回らせてもらいました。いくつか回ると自分に足りないところが見えてくるので、それを補うような形で勉強しましたね。例えば、早産で搬送された先の病院で何をやっているのかを勉強させてもらったり、がんセンターで専門的な手術を学んだり…と、様々な経験をさせてもらいました。
――その後、再びこの病院に戻ってこられたのですね。
宮:関連病院を回ってまた戻ってくる以上は、何かこの病院に還元できるような知識なり技術がないと…と思っていたので、「このぐらいできれば一人前だな」という自信がついてから戻って来ました。ちょうど10年目ぐらいの頃でしたね。
今の若い先生たちを見ていても、専門医資格を取るぐらいの年代になってくると、落ち着きのようなものを感じます。一般病院の産婦人科医としては、帝王切開や婦人科緊急手術、子宮や卵巣の手術などを、自分が上の立場で下の医師と一緒にできるようになれば一人前と言えるのではないでしょうか。そしてその後に、周産期専門医などといったスペシャリティが目標になってくるのだと思います。

「一人前」だと思えたのは
病院を回って経験を積んだ10年目ぐらいの頃
【産婦人科 番外編】宮本 純孝医師
(さいたま赤十字病院 産婦人科)-(後編)
女性の先生も多い分野
――婦人科領域の魅力を教えて下さい。
宮:例えば、周産期やがんといった領域は分娩や手術がメインですから、ある程度技術がないとできない部分があります。知識だけでなく、手が確実に動くことが求められる。ですが中高年の婦人科領域は、どちらかというと勉強して知識を得ることが重要になってくるように感じます。さらに、情報がどんどんアップデートされる領域なので、学会に行ったり論文を読んだりすれば自分でレベルアップができます。ですから、例えば出産や育児で現場を少し離れた女性の先生が勉強するのにも、とても適した分野なんじゃないかと思います。
――産婦人科は女性の先生も多いですよね。
宮:はい。けれど女性の先生は、やっぱり結婚・出産の後だとなかなかフルタイムで月6回当直…なんて勤務スタイルはできなくなります。せっかく資格と技術があっても仕事がないことも多く、もったいないですよね。
そこでこの病院では、そういった女性の先生方に手伝いに来てもらうシステムを始めているんです。たまたま市内に小さい子どものいる女性の先生が2人いたので、その2人にそれぞれ週1回ずつ、昼間の時間帯のお手伝いに来てもらったのがきっかけです。私としてはそういう先生たちと一緒に仕事ができて楽しいですし、彼女たちもやりがいを感じているようでした。やはり医師の数が少ないと困る場面は多々ありますので、週1回でもかなり助かるものですよ。
今後のキャリア
――今後の目標を教えて下さい。
宮:女性のヘルスケアについて、可能であれば専門外来などもやってみたいと思っています。近年、日本更年期医学会が日本女性医学学会と名称変更し、若い世代から更年期、さらには老年期までの流れを「女性の一生」として捉え、スペシャリティとして認定するようになったんです。私も2年前にその認定試験を受けて資格を取りました。
また、周産期医療も勉強したいなと思っています。というのも、この病院は数年後に新病棟に移転し、その病棟の隣に埼玉県立小児医療センターも移転して来て、この病院の産科のフロアと小児医療センターのNICUのフロアとをつなぐという計画があるんです。私自身昨年、小児医療センターのNICUで2か月間新生児を勉強させてもらったこともあり、周産期医療に興味が湧いてきました。現在この病院には小児科の常勤医がいないこともあり、小児医療センターの先生方といろいろ相談しあえる良い関係を築けたことは大きなプラスでした。大規模移転に向けて、私もこれから周産期に力を入れていかなければと感じています。
1993年 群馬大学医学部卒業
2013年7月現在 さいたま赤十字病院 産婦人科 副部長



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