医学生×新入社員
同世代のリアリティー
コロナ禍で入社して 編(前編)

今回のテーマは「コロナ禍で入社して」
今回は、新型コロナウイルス感染症の流行下の2020年春に入社した社会人に集まってもらいました。入社時の苦労やオンライン化に伴う変化などについて、詳しくお話を聞きました。
緊急事態宣言下で入社することに
青木(以下、青):皆さんはどういったお仕事をされているのでしょうか?
森角(以下、森):私は通信系の会社で働いています。総合職で、様々な職種を経験し、キャリアアップしていきます。現在は支店に配属され、中堅・中小企業のお客様の営業担当をしています。
渡邊(以下、渡):IT系の会社のBPOサービス*の部署で営業をしています。具体的には、紙媒体の電子化など、在宅勤務の促進に関する事業をしています。
高谷(以下、高):私は国際物流の会社に総合職として採用されました。弊社では総合職も初めのうちは現場に配属されるので、今はコンテナヤードで働いています。税関への申告やコンテナの管理などの事務の仕事が多いのですが、総合職としてチームをまとめる立場でもあります。
佐藤(以下、佐):皆さんは昨年のコロナ禍で入社されましたが、実際に働き始めたのはいつからでしょうか?
高:弊社では4月1日に入社式があり、最初の2日間だけ出社して説明や研修を受けました。その後は自宅待機になり、数日間オンライン研修を受け、会社の業務マニュアルをレポートにまとめるという課題が与えられました。出社は昨年の緊急事態宣言が解除された後からでした。
森:弊社では例年、新入社員は社員寮に宿泊し、3週間の集合研修を受けていました。ですが、昨年は急遽白紙となり、代わりに在宅で動画研修を受けました。5月後半からは現在配属されている支店でのオンライン研修を行い、実際に出社したのは6月1日からです。
渡:弊社はベンチャー企業なので、もともと新卒の研修カリキュラムなどはありませんでした。さらに私が配属された部署は新卒を受け入れるのが初めてだったので、5月に出社するまで手探りの状況で進んでいったようでした。4月中は、学生に向けて弊社の概要を説明できるようにするという課題を出されました。5月からは部署に配属され、6月から客先で営業活動をするようになりました。
在宅勤務?出社?仕事のやり方
柏原(以下、柏):在宅勤務と出社、今はどちらが多いですか?
高:私は現場職なので在宅勤務は難しいです。ここ数か月で少しずつ在宅勤務の環境を整えましたが、できて週1回程度です。出社すると例年通りに先輩から直接仕事を教えてもらえるので、仕事を覚えることが苦にならなかった点は良かったです。
森:私も在宅勤務は週1回程度です。本社社員のほとんどは在宅勤務ですが、営業などの現場職はどうしても外出しないといけない場合があるのです。やはり私も、わからないことがあるときに直接先輩に聞けるのはありがたいと感じています。
渡:弊社はエンジニアなど技術職の社員はほとんど在宅勤務ですが、営業職はお客様に呼ばれることもまだ多いので、在宅勤務への完全な移行は難しいです。僕もやはり、週に一度在宅勤務できれば良いほうですね。
佐:営業職の方は、在宅勤務のときはどのように仕事をするのでしょうか?
森:オンラインツールを使って商談をしています。最終的にはお客様のもとで立ち合わなければならないことが多いのですが、毎回訪問する必要はありません。
渡:月200件ほど問い合わせがくるので、一社一社訪問するよりも電話やオンラインでのやり取りの方が効率よく進められます。ただ、確かに直接会うほうが話も進むので、一長一短だと感じますね。
*BPOサービス…他社の業務プロセスを外部委託として代行するサービス(Business Process Outsourcing)
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コロナ禍で入社して 編(後編)
オンライン化による不安と新たな発見
青:コロナ禍で様々な仕事の変化があったと思いますが、不安を感じたことはありますか?
森:私が働く東京の支店では、お客様から来た依頼に対応するインバウンドという業務が多いため、新人も例年通りの仕事ができ、あまり不安を感じることはありませんでした。しかし、地方の支店では自分から新規のお客様にアプローチするアウトバウンドという業務が多く、新人には難しいうえに、支店によっては在宅勤務が強く推奨されているため、同期の中には何もせず家にいることになってしまい不安だという人もいました。
渡:他の業界に就職した同級生の友人の中には、コロナ禍で業務がなくなってしまい給料が減ったという人や、夏まで自宅待機したという人もいました。
柏:社内のコミュニケーションに変化はありましたか?
高:部署としての飲み会は一切なくなりました。もし私たちが感染して仕事ができなくなると物流が止まってしまうので、会社全体で気を付けています。飲み会が開かれないと他の営業所の同期と会う機会がないので、例年と比べると仲が深まっていないように感じます。会社の飲み会も良いことばかりではありませんが、今は本当にただ会社に仕事をしに行っているだけなので、それはそれで辛いですね。
森:弊社も飲み会はほとんどできておらず、入社直後の研修もなかったため、同期全体のつながりは希薄です。しかし、同じ支店で働く同期とのつながりは強いと感じています。また、支店には50代のベテラン社員も多く配属されていますが、コロナ禍でオンラインのチャットが普及したことで、メールに比べるとフランクにやり取りができるようになり、ありがたいと感じています。
渡:確かに、コミュニケーションのオンライン化にも良い点はありますよね。僕は各部署から人員を集めて作られた、社内のコミュニケーションをデザインする委員会に参加したのですが、そこで行った調査の結果、コロナ禍でコミュニケーションが取れなくなった事例は意外と少なく、むしろチャットでのやり取りが盛んになっていたことがわかりました。また、社内では自分の半生や持っている知識を語り合うオンラインイベントを開催したり、社内報の作成にもオンラインのアンケートを利用していたりするので、従来オフラインでやっていたものをオンラインに移行しても問題がないこともあると気付かされました。
コロナ禍で働くこと学ぶこと
柏:皆さんが就職活動をされたのはコロナ禍の前ですよね。現在の会社に就職しようと思った理由は何でしたか?
渡:僕は長年取り組んできた野球の経験から、人柄の良い人たちとチームを組めるかどうかを会社選びの基準の一つとしていました。就活中、他の会社と悩んでいると正直に打ち明けたところ、親身に相談に乗ってくれたのが今の会社でした。また、野球ではもともと強いチームに所属していた時より、弱小のチームに所属していた時のほうが、自分たちの手で未来を切り開き、自由なことができるやりがいを感じていたので、ベンチャーである今の会社を選びました。
高:私は渡邊さんとは逆に、安定と福利厚生を考慮して大手企業を選びました。物流系の会社を選んだのは生活の基盤となるような仕事をしたいと思ったからです。得意な英語を活かせることも理由の一つでした。
森:私も会社を選ぶ際、福利厚生は重視しました。もともと通信業界に興味があったわけではないのですが、最初の合同説明会に行った時に偶然入ったブースが今の会社で、説明を聞いて興味を抱きました。その後は他の業界の入社試験も受けたのですが、最初に面白いと感じた会社のほうが長く働けるだろうと思い、今の会社に決めました。
渡:弊社も、上場している親会社が100%出資する子会社なので、全くの新しいベンチャー企業ではありません。どこに入社するかを決める際、やはり安定性は重視しましたね。
佐:ではコロナ禍の今、ご自身のお仕事について、改めてどう感じていらっしゃいますか?
高:物流はコロナ禍においても生活を支えているので、現在のような状況だからこそ、業績の安定性を実感しています。
森:現在テレワークが推進されていますが、インターネットを使って仕事や勉強ができるように、環境を整備することが私たちの仕事です。皆さんの生活を充実させるための基盤を作っていると考えると、改めて責任感と使命感を持って仕事に臨もうと思いますね。
柏:会社を選ぶ基準も、コロナ禍によって今後は変化していくと思いますか?
森:現在就活中の後輩たちに話を聞くと、コロナ禍において社会に貢献している会社かどうかという視点を持っている人が多いと感じますね。時代の節目になっているのかもしれません。
高:様々な変化が訪れているのは学生の皆さんも同じだと思います。医学生は他学部の学生よりもオンラインで授業を行うのが難しいイメージがありますが、皆さんはどうですか?
青:昨年は緊急事態宣言のため、私の大学では5~6年生の病院実習がオンラインで実施されました。今年もおそらく様々な制限があると思います。
柏:お互い、コロナ禍で様々な苦労がありますね。今回お話しして、新社会人の皆さんが様々な形でそれを乗り越えていることがよくわかりました。また、私たちの生活は世の中の色々な仕事によって支えられているのだと、改めて実感しました。医師も人を支える仕事なので、とても刺激になりました。
※取材:2021年5月
※取材対象者の所属は取材時のものです。



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