日本医科学生総合体育大会
オンライン東西医体座談会(前編)
コロナ禍の医体運営
有馬(以下、有):前号では今年の東西医体の開催の可否が決定していない段階で、僕と太田くんで対談を行いました。その後、残念ながら中止が決定してしまいましたが、今回は他の運営メンバーも交えて、これまでを振り返っていきたいと思います。
まず、東医体の中止が決定するまでの経緯について、お話を聞かせてください。
太田(以下、太):連盟理事の先生から大会中止の方向で進めてほしいとの連絡を頂いたのは、前号の対談直後の2月でした。ただし、中止を決定する方法は規定にないので、昨年の第63回大会の運営本部長の方に教えてもらいながら進めました。理事会で先生方の多数決をとったところ、中止が可決されました。
西医体はどのような経緯で中止を決定したのでしょうか?
有:3月13日の第1回西医体評議会では、すべての競技は例年通りできないものの、縮小開催という形で話を進めていました。そのために感染症対策委員などを新設し、準備していたのですが、3月17日に学長と学部長と相談のうえ、中止を決定することにしました。
理由は三つあります。まずは大会を開催した後で感染が拡大した場合、学生は責任を負いきれないということ。次に、医学生という立場を考えた場合、感染拡大の契機になってはいけないということ。最後に、世間でも4月初めから5月にかけて第4波がくるのではないかと懸念されていたことです。
3月26日に臨時の評議会を開き、今年度の中止を伝えました。開催に向けて今まさに動き出そうとした時に中止になってしまったので、残念ですね。
感染症対策委員の設置
太:感染症対策委員はどのような活動を予定していましたか?
山下(以下、山):当初は、私たち安全対策委員が感染症対策も行う予定でした。しかし、私たちの本来の業務は大会中に参加者が怪我をした際に病院に搬送したり、保険を申請したりすることであり、兼任には困難が予想されました。そのため昨年10月、私と有馬くんが学長と学務課と話し合い、鹿児島大学病院で感染制御を担当されている先生をオブザーバーとして、感染対策を主に担当する委員の新設を決めました。私たちが本気で感染対策に取り組んでいるという姿勢を見せなければ、今後の理解は得られないだろうという思いもありました。
有:担当者については山下さんと話し合った結果、本村さんにお願いしました。
山:運営委員はもともと30人ほどおり、それに加えて各部活の競技責任者もいるため、学年の三分の一はすでに西医体に関する何かしらの役職に就いていました。それ以外で、大きな仕事を任せることができ、かつ自分たちともコミュニケーションが取りやすそうな人を考え、私と有馬くんの高校の同級生でもある本村さんを誘いました。
本村(以下、本):責任を伴う西医体の運営委員を自分が務められるか不安があり、もともと役職には就いていなかったのですが、運営委員の方々が頑張っている姿を見ていて、不安はあるけれど力になれたらと思い、受けることにしました。とはいえ、委員としての活動期間はごくわずかになってしまいました。
有:本村さんに仕事をお願いしようとしていた矢先に中止が決定してしまいました。ですが、感染症対策のマニュアル策定ではずいぶん協力してもらったので、感謝しています。
東西医体の役職分担
太:お話を伺うと、西医体との運営体制の違いを実感します。東医体は四つの大学が競技を分担して主管校を務めています。渉外など、本部を務める大学にしかない役職も一部ありますが、基本的には競技責任者だけでなく、広報局や安全対策局などもすべての主管校にあります。
清水(以下、清):役職ごとに独立して動いているため、それぞれの詳しい働きについては私たち運営本部でも把握しきれていない部分があります。
山:4大学合同での運営にあたり、大変なことはありましたか?
清:意思疎通の難しさは常に感じていました。例年は四校会議という親睦会があるのですが、今年はコロナ禍でなくなってしまったことも大きかったです。各大学の運営部長同士は以前から何度か顔合わせをしていたので、連絡を取りやすかったのですが、そうではない他の委員はもっと大変だったのではないかと思います。西医体では、委員間のコミュニケーションはどうしていましたか?
有:西医体は主管が1校なので、急ぎの仕事などがあれば、直接依頼に行くことができました。その点は連携が取りやすかったかもしれません。
山:ただ、鹿児島大学にない部活の競技は他大学に主管が移るので、その大学と文面のみでやり取りをしなければならなかったのは少し大変でした。
日本医科学生総合体育大会
オンライン東西医体座談会(後編)
来年度の引き継ぎに向けて
太:2年続けて大会を開催できなかったので、引き継ぎには様々な心配があります。例えば、本来ならば7~8月の東医体期間中に運営が日直をするという仕事があるのですが、経験していない僕たちはやり方がわかりません。最後に大会を実施できた第62回大会の運営委員にお話を伺わなければわからないことが色々あるのですが、当時運営を務めた先輩方は来年すでに研修医なので、連絡を取り合うのも大変ではないかと思います。
山:大会準備中より開催期間中の方が業務のウエイトの大きい部門もありますからね。例えば安全対策委員は病院や保険会社とのやり取りもしなければならないので、実際に経験した方々でなければ引き継ぎは難しいのかもしれません。
本:今年、運営委員を中心に作成した感染症対策のマニュアルは来年も引き継がれると思いますが、マニュアルがあっても手探りの状況は想定されますね。
有:確かに不安は色々とありますね。ただ、僕たちも最初は先輩から引き継いだことをもとにやっていましたが、だんだん自分たちで考えながら仕事を進められるようになりました。そして、ここまで運営本部としてやるべきことはできたので、来年の運営委員たちもきっと、自分たちでやり方を見つけて進めていけるのではないかと思います。
太:冬季競技の可否の決定など、僕たちもまだ仕事はあるので、引き続き頑張ります。
リーダーへの感謝
清:様々な困難はありましたが、太田くんが運営本部長を務めてくれたことに感謝しています。東医体では運営本部の大学が全体の9割程度の仕事をし、残り1割を他の3大学がするという形なので、運営本部と運営部では、仕事量が全く違います。本部は本当に忙しくて大変だったのではないかと思います。
西医体の皆さんにとって、有馬くんはどういうリーダーでしたか?
山:有馬くんは責任感が強く、高校時代からクラス委員長などを務めていました。今回の運営委員長も、100人以上いる学年のグループLINEの中で立候補してくれました。
本:昔も今も、ずっと行動力がある人という印象ですね。以前から、有馬くんがトップだったら仕事もより円滑に進められるだろうし、やりやすいだろうなと思っていました。感染症対策委員を頼まれた時も、自分もそういう頼れる人間になりたいと思って引き受けました。
有:こういうことを言ってもらえる機会はあまりないので、嬉しいですね。
太:東西の運営で話すこともなかなかないので、今回はいい機会になりました。
太田 拓也
第64回東医体 運営本部長
東京医科大学2年
清水 友貴
第64回東医体 運営部長
東邦大学3年
有馬 悠平
第73回西医体 運営委員長
鹿児島大学3年
本村 静羽
第73回西医体 感染症対策委員
鹿児島大学3年
山下 奈津子
第73回西医体 安全対策委員
鹿児島大学3年
※取材:2021年5月
※取材対象者の所属は取材時のものです。



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