interview MPH取得×タイ 
座光寺 正裕 (後編)

――帰国されてからは、どのような取り組みをされていますか?

1年間外で勉強させてもらったので、何かしら病院や地域社会に還元したいと思いました。何かできないかなと思って、昨年の4月に病院の中で国際保健に熱心なスタッフを集め、「佐久の国際保健を考える会」という勉強会を開きました。開いてみたら、看護師や検査技師、事務の方など総勢20名ほど集まったので、その流れで国際保健委員会を立ち上げました。持ち回りで海外研修生の対応を行ったり、全国各地から学生や社会人を集めて地域保健と国際社会についての勉強会を開いたり、タイ大使館が行っている移動領事館で健康相談を行ったりしました。実際に活動してみると、勉強したいけれどそういう場がないと思っている人がたくさんいることがわかり、これを佐久の魅力にしていけるのではないかという自信を得ました。

――お話を伺っていると、何故この土地で国際保健に関する活動が盛んになるのか不思議に感じるのですが。

もともと佐久総合病院は、農民たちが厳しい生活環境の中で抱えていた健康問題を解決しようというところからスタートしているんです。今でこそ長野県は健康長寿で有名になりましたが、この半世紀、貧しさの中で人々が病を克服するにはどうしたらいいのか試行錯誤してきました。そうした取り組みが、新興国が今直面している課題の解決の糸口になるのではないかと思っています。

――これから留学してみたいという学生に一言メッセージをお願いします。

留学って、いつ行くか、どう行くかをしっかり決めなきゃいけないような気がするかもしれませんが、決まった方法なんてないし、多様でいいと思うのです。僕みたいに、市中病院で初期研修が終わった後にポッと1年間行くっていうのも、問題なくできることなので、医師としてのキャリアを考えるうえで、選択肢として残しておいてほしいなと思いますね。僕の場合は留学することで、日本で臨床を続けていたら確保できなかった子育ての時間や、自分の臨床経験を振り返る時間を得ることができました。留学先で培った経験やネットワークも、実を結びつつあるように感じています。医師のあり方にも多様性があっていいと思うんです。挫折や回り道をした経験っていうのも大事だと思うし、そういう人が医療の現場に戻ってきて、それぞれの経験からフィードバックするのもいいんじゃないかなと思います。

座光寺 正裕
佐久総合病院
地域医療部 後期研修医
国際保健委員会 委員長
2009年、九州大学医学部卒業。佐久総合病院にて初期研修後、タイ・マヒドン大学に留学し、公衆衛生大学院を修了。帰国後、病院内に国際保健委員会を立ち上げる。

MPHって何?

MPH(Master of Public Health)は、公衆衛生大学院で取得できる修士号です。公衆衛生大学院では、疫学、生物統計学、保健医療経済学、健康社会学、医療倫理学、健康医療政策学、医療安全管理学、環境健康医学などを学びます。
座光寺先生は、病気に直接アプローチするのではなく、その根本原因にまで遡って問題を解決したいという思いから、公衆衛生大学院への進学を決めたと言います。疾病を予防することや、いま健康な人も含めたすべての人々がよりよく生活できる社会を設計することに関心がある人は、公衆衛生を学ぶことを視野に入れてみてもいいかもしれません。

※東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻WEBを参考に作成。教育機関によってカリキュラムや教育目標が異なる場合があります。

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