医賠責とは?-(前編)

医師が安心して診療を行えるように、万一のときでも紛争解決のサポートを得られる仕組みが整っています。

病院だけでなく、勤務医個人もカバー

医賠責

みなさんは「医賠責(医師賠償責任保険)」をご存知ですか? これは、もし医療事故などが起こってしまった場合、金銭面などで紛争解決のサポートを受けることのできる保険です。医学生のみなさんは、卒後しばらくは病院勤務になることがほとんどでしょう。実はこの「医賠責」、開業医だけでなく勤務医も加入しておきたい仕組みなのです。

近年、医療事故が起こった場合、その病院を訴えるだけでなく、勤務医個人に責任を問い、個人に対して訴訟を起こすケースも増えています。少し前までは、病院が保険に加入していれば、勤務医も自動的に担保されるような補償が一般的でした。しかし、数年前から病院を対象とした保険が変わってきており、追加の保険料を支払わなければ勤務医は補償の対象とならないものが増えているそうです。そのため、もし訴訟が起こった場合、病院の意向によっては必ずしも勤務医が保険でカバーされるとは限らなくなっているのです。

医賠責は医師個人を対象とした保険なので、勤務先がどのような保険に入っているかにかかわらず、このような「もしもの時」に備えることができます。日本医師会の医賠責は、医師会のA会員になれば自動的に被保険者となる仕組みになっており、1事故につき1億円まで補償されます。また、勤務先を変更した場合や、アルバイト先で紛争が起こった場合も補償されます。

日本医師会による医賠責のメリット

日本医師会の医賠責とは別に、民間にも医賠責保険はあります。では、日本医師会の医賠責の特徴とメリットは何でしょうか。

①専門の調査・審査機関がある

まず、日本医師会の医賠責には、調査委員会と審査会があります。事故が報告されると、調査委員会にその情報が送られ、討議が行われるのです。この調査委員会は、各科の専門の医師をはじめ、医療の知識を持った弁護士、保険者などで構成されています。この調査委員会が事故を一つ一つ調査し、その後、中立・公正な審査会が賠償責任の有無・賠償責任額などを判断しています。こういった調査・審査機関があるのは、日本医師会の医賠責ならではの特徴と言えます。専門家によって中立的に審査が行われるので、医師にとっても安心につながります。(民間の保険ではこういった判断は保険会社が行っています。)

②訴訟や示談などを代行

2つ目の特徴は、医師ができるだけ矢面に立つことなく紛争を解決できるように、訴訟・示談などの交渉を代行する仕組みが整っている点です。例えば訴訟が起こった際、民間の保険では自ら弁護士の手配を行わなければなりませんが、医師会の医賠責では医療分野を専門としている弁護士の手配から費用負担まで、医賠責の範囲内で医師会が当事者に代わって行います。これは、医師が安心して医療を行うことができるように、という配慮に基づいたものです。裁判での敗訴の場合だけでなく、和解や示談といった場合にかかった費用も補償の対象になります。


「医師になる」ということ。 読者アンケートはこちら