同世代のリアリティー
ブライダル業界 編
医学生 × ブライダル業界
医学部にいると、同世代の他分野の人たちとの交流が持てないと言われています。そこでこのコーナーでは、別の世界で生きる同世代の「リアリティー」を、医学生たちが探ります。今回は、ブライダル業界で働く社会人3名と医学生3名で座談会を行いました。

今回のテーマは「ブライダル業界」
今回は、ブライダル業界の中でも結婚式場で働く社会人3名に集まってもらいました。どうしてこの仕事を選んだのか、どのような仕事をしているのか、仕事のやりがいは何かなど、詳しくお話を聴きました。
ブライダル業界の仕事って何をするの?
永原(以下、永):皆さんは結婚式場で、どのような仕事を担当されているのでしょうか?
出口(以下、出):僕は厨房で洋食の調理を担当しています。新卒で入社し、現在は8年目です。
山本(以下、山):私はウェディングスタイリストと言い、新郎様・新婦様が当日に着る衣装を決めるお手伝いをしています。新卒で入社し、現在は5年目です。
西尾(以下、西):私はサービスクリエイターという職種で、主に当日の現場の進行を担当しています。ウェディングスタイリストとも、厨房とも関係がある仕事ですね。中途採用で、現在5年目です。
松久(以下、松):結婚式当日を迎えるまでの準備はどのような流れで、その中で皆さんはどのように関わるのでしょうか?
出:結婚式の開催を決めたカップルが式場見学に訪れたら、まず予定している人数や細かい要望に基づいて見積もりを出します。
僕の担当する厨房は、その式場見学の段階から関わります。見学に来たお客様にコースのメインとデザートなどの簡単な料理を何品か作り、実際に召し上がっていただきます。
西:その際の料理出しのサービスなどは私たちの部署が行います。私たちの地域だけでも10か所ほどの結婚式場があるので、お客様の多くは他の式場も見学されます。そのため、見学の段階から好感を持っていただけるようなおもてなしを心がけています。
田中(以下、田):お料理がおいしかったり、スタッフの皆さんの対応が良いと感じたりすると、ここで式を挙げたい、となるわけですね。
山:はい。そして私たちウェディングスタイリストは、お客様が見積もりをもとにプランを決めた後、衣装やティアラ、アクセサリーなどを選ぶお手伝いをします。その後も、ドレスのアイロンがけや補正といった当日までの準備に携わります。
結婚式場ならではの様々な工夫
田:1日に何件くらいの挙式があるのでしょうか?
西:私たちの支店には1日1組が挙式できる会場、2組の会場、3組の会場の3会場がありますから、合計1日6組ですね。
松:1日にそれだけあると、ミスの予防やトラブル対応が大変そうですね。
西:ダブルチェック、トリプルチェックなどを行い、ミスの予防は徹底しています。特に披露宴のケーキに関しては、パティシエ、厨房責任者、ウェディングプランナー、現場キャプテンの4人がチェックを行います。
永:当日の進行は、サービス担当のスタッフが行うのですね。
西:はい。私たちは、新郎様・新婦様がより素敵に見える演出や、お料理をおいしく召し上がっていただけるような配膳などを事前に考え、それを当日にしっかり実現する役割を担います。衣装、厨房などのスタッフがこれまで積み上げてきたお客様との関係性や思いを受け継ぐ、リレーのアンカーのような存在だと思っています。お客様によってご希望もそれぞれ異なるので、同じ披露宴は一つもないと感じます。
松:当日、厨房担当や衣装担当は参列者の方々と顔を合わせることはあるのでしょうか?
出:乾杯の前にお料理やコースの説明をすることはありますね。また、僕たちの支店には各会場にガラス張りのキッチンがあり、厨房の様子を参列者の方々に見て楽しんでいただけるようになっています。
山:私は当日の朝、最終確認に立ち会ったら、着付けなどの準備は美容師さんにお任せするので、参列者の方々に会うことはあまりありません。式までの半年ほどの間、新郎様・新婦様と深く関わりながら事前準備を進めるのが主な仕事です。
地域や時代に合わせて様々に変わる結婚式
松:皆さんの式場では、どの程度の規模の式が多いのですか?
西:私たちが働く北陸では、だいたい50人程度の規模のものが多いです。九州はもう少し参列者の人数が多いと聞いたことがあります。
田:結婚式の内容に地域差はあるのでしょうか?
西:愛知は引き出物が豪華、九州であればお酒の量が多い、高知だと鰹の藁焼きが大皿で出てくる、などの地域差があると聞いたことがあります。
出:北陸は料理に予算を割かれる方が多い印象があります。
山:衣装に予算を割かれる方は、東京や大阪、神戸などの大都市の方が多い印象ですね。こういった傾向を見ると、地域ごとでそれぞれ特に何を大切にしているかがわかります。
永:コロナ禍以降、オンライン結婚式が普及したという記事を見たことがありますが、皆さんも行っているのでしょうか?
西:私たちの式場ではオンライン挙式を行う場合、親族以外の参列者の方々がオンラインで参加するという形を基本としています。機材の準備をする際は、新郎様・新婦様の姿がオンラインでしっかり見える位置に配置するよう注意しています。また、式場の雰囲気が伝わるような演奏の見せ方や、マジックなどの遠方でも楽しめる演出を心がけています。
出:厨房からはお祝い膳という形でゲストの方々にお料理を宅配し、同じタイミングで召し上がっていただくなどの工夫をしています。コロナ禍が良かったとは思いませんが、考え方を柔軟に変えざるを得なかった結果、クオリティを保った料理や結婚式ならではの演出を、離れた場所からも楽しんでいただける新たなやり方を見つけられたと思っています。
松:それ以外に最近の結婚式のトレンドなどはありますか?
山:SNSが普及して以降、具体的な写真を持ってきて「この衣装を着たい」とご希望になる新婦様が多くなっています。私たちの会社ではドレスの持ち込みはできないので、ご希望通りのドレスをご用意できず、その代わりに似たものをご提案するということもあります。しかし、ベールや補正下着、アクセサリーなどは持ち込めるので、ご自身でこだわりのあるものを持ち込む方も多くなっています。
西:式場側でもSNSを活用する工夫をしています。参列者の方々の各テーブルに「ぜひSNSで拡散してください」というポップを置いたこともありました。
晴れの日を祝う場で働くやりがい
田:皆さんはなぜブライダル業界に入ったのでしょうか?また、どのようなところにやりがいを感じていますか?
出:私はもともと料理の専門学校に通っていました。学生時代に今の会社でアルバイトをしてみたところ、おめでたい場で、特別な料理を作ることにやりがいを感じたのがきっかけで就職を考えました。結婚式場の料理は大量調理が基本なので、全体の仕上がりを意識して時間を逆算して作らなければならないという難しさがあります。しかしその分、より多くの方に自分の料理を召し上がっていただけるというやりがいも感じます。
山:私はお客様にとって人生で最高の時間を作ることができる点に惹かれ、もともとブライダル業界を目指していました。準備段階から長期間お客様に関わることができるという点も魅力に感じました。実際に働いてみると想像以上で、「山本さんに担当してもらってよかった」という声やお手紙を頂けると、とても嬉しいです。
西:私は前職がエンドユーザーの顔が見えない職種だったのですが、自分が何かをした結果、誰かが喜んでくれる姿を見ることができる仕事をしたいと思い、転職をしました。当初は期待通り、新郎様・新婦様やゲストの皆さんの喜ぶ顔にやりがいを感じていましたが、最近は後輩スタッフの成長が見られることにも達成感を得られるようになりました。研修などを通じて、新郎様・新婦様やお客様のために自発的に動くようになっていく姿を見られると嬉しいです。
永:皆さんのお話を聴いていると、ブライダル業界ならではの信念を感じます。スタッフの教育においても、その信念を伝える工夫を行っているのでしょうか?
西:結婚式場のスタッフの多くはアルバイトなのですが、事前にしっかりとマナーや所作の全体講義を行っています。また、社内のスタッフの間では「お疲れさまです」ではなく「お元気さまです」と言うという社内ルールが設けられています。言葉には気持ちが乗るので、マイナスな言葉は使わないよう、日々意識しています。
永:最後に、皆さんが考える結婚式場選びのポイントを教えてください。
出:私はやはり料理ですね。式場を回る際、大体どこでも試食はできるので、機会があれば皆さんもぜひ試してほしいです。
西:私は応対するスタッフですね。式場の顔になるので、接客の仕方や言葉遣い、気持ちの面を見て「この人になら」と思う式場を選んでほしいと思います。
田:病院に来たくて来る人はいないので、「人のために」という仕事でも、医療界とブライダル業界では様々な点で見方が正反対で、とても面白かったです。
松:自分が結婚式を挙げる側になったとしても、参列者側になったとしても、今日伺ったお話を参考にしたいと思います。
※取材:2022年5月
※取材対象者の所属は取材時のものです。
※この内容は、今回参加した社会人のお話に基づくものです。



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