日本医師会の取り組み

医師の多様な働き方を支えるハンドブック

いざというときに役に立つ
医師のためのハンドブックがあります

医師として働く人に向けた、社会人としての基礎知識や医師ならではの課題とその対処法、様々なライフイベントへの支援策などを掲載したパンフレットを作成しています。

医師として働くために

ハンドブック

医学部を卒業後、ほとんどの医師はどこかの組織に雇われて働くでしょう。「医師」になると同時に、皆さんは社会人になり、労働者になるのです。しかし「働くこと」にまつわる制度について知る機会は、これまであまり多くありませんでした。そのため、労働に関する制度や、多様な働き方を支える仕組みに関する情報を取りまとめ、作成されたのが「医師の多様な働き方を支えるハンドブック」です。

第1章「社会人として働くうえでの基本的な知識」は、労働に関する法律や給与明細の読み方などを解説しています。

第2章「勤務医として働くうえで必要な知識」は、医師だからこそ直面しやすい給与や税に関する問題などを取り上げています。

第3章「出産・育児に関して直面する課題と支える制度」は、妊娠中に起こりうるトラブルや、育児休業・保育先の確保に関する情報などが掲載されています。

WEBサイト

女性医師支援センターが作ったハンドブックというと、女性医師だけを対象にしているように思われるかもしれませんが、性別を問わず全ての医師が知っておくべきことが掲載されています。卒業時に、大学や医師会を通じて配布する取り組みも進んでいますが、WEBサイトからも最新情報が見られるので、ぜひ参考にしてください。

日本医師会女性医師支援センターのサイトはこちら

https://www.med.or.jp/joseiishi/

ハンドブック目次

第1章 社会人として働くうえでの基本的な知識

1-1 労働者を守る制度・仕組み
1-2 自身の労働条件をきちんと把握しましょう
1-3 労働時間・時間外労働のルール
1-4 休日・休暇のルール
1-5 出産・育児・介護を支える仕組み
1-6 給与明細を見てみましょう
1-7 働けない人を経済的に支える仕組み

第2章 勤務医として働くうえで必要な知識

2-1 医師の働き方の構造的問題
2-2 医師が陥りがちな「お金」の落とし穴
2-3 休業時のサポートにも気をつけましょう
2-4 臨床研修・専門研修を中断する場合
2-5 戸籍上の姓が変わったらどうしたらいい?
2-6 旧姓のまま働きたい場合はどうしたらいい?

第3章 出産・育児に関して直面する課題と支える制度

3-1 妊娠初期~中期の課題
3-2 妊娠後期~出産時の課題
3-3 育児休業中の課題
3-4 保育先の確保
3-5 復帰後の働き方
3-6 ブランク後の復帰までのステップ
3-7 自分に合った職場を探すために

日本医師会女性医師バンクのご案内

女性医師支援センターより

全ての医師が必要な情報にアクセスでき
多様な働き方を実現していくために

神村 裕子
日本医師会常任理事

――「医師の多様な働き方を支えるハンドブック」は、どのような経緯で作成されたのでしょうか?

神村(以下、神):日本医師会女性医師支援センターは、厚生労働省からの指定を受け、女性医師をはじめとする全ての医師の様々な働き方を支援する取り組みを行っています。その相談窓口である女性医師バンクでは職業紹介事業を行っており、これまでも多くの医師からの問い合わせを受けました。その相談に答えるなかで、労働に関する法律や、出産・育児に関して利用できる制度などについて、詳しく知らないという医師も少なくないことがわかってきたのです。今後、制度に関する情報不足で不利益を被る医師を増やさないためにも、必要となる知識が簡単に得られる機会を作るべきだと感じ、このハンドブックの作成を決めました。

――実際にハンドブックを作成し、どのような反響がありましたか?

:都道府県医師会からは、医学生や研修医に対する講習会で配りたいという依頼を数多く頂きました。また、大学の講義で使いたいという依頼や、学会で紹介したいという依頼もあり、多方面でご活用いただいているようです。

ハンドブックの内容に関しては、これまで男女共同参画に熱心に取り組まれていた先生から「皆に知っておいてほしいと思っていた内容が一冊にまとまっており、まさにこういう冊子が欲しいと思っていた」という声を頂きました。また、女性医師バンクにお問い合わせいただいた医師の皆さんにもこのハンドブックをお渡ししているのですが、「もっと早く知りたかった」「若い時に読みたかった」などといった感想を頂いています。

――今後はどのような場での活用を考えているのでしょうか?

:より多くの大学の講義や学会の研修会などで活用していただきたいですし、病院における入職時の説明会などでも活用していただければと考えています。

また、このハンドブックは医学生や若手医師だけでなく、管理者の皆さんにも読んでいただきたいと考えています。女性医師バンクに寄せられる相談の中には、出産予定を踏まえた勤務先を希望していたにもかかわらず、管理者の法律に関する知識不足のために希望とは異なる病院に派遣されてしまったというケースもありました。多様な働き方は、管理者側も制度や支援策に関して十分な情報を持っていることで実現されるものだと思います。実際に読んでいただいた管理者の方からは「知らなかったことが色々とあり、勉強になった」という声を頂いています。

そして、こういったハンドブックは、最新の情報が掲載されていることが何よりも肝心です。女性医師支援センターのWEBサイトでも、この冊子の内容を含めて最新情報を発信していきたいと考えています。

※取材:2022年7月
※取材対象者の所属は取材時のものです。

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