授業探訪 医学部の授業を見てみよう!
愛媛大学「保健所実習」
この企画では、学生から「面白い」「興味深い」と推薦のあった授業を編集部が取材し、読者の皆さんに紹介します!
地域の保健所等で体験型実習ができる!

班ごとにそれぞれ地域の施設を訪れ、公衆衛生に関する施策がどのように行われているかを二日間学びます。実習先は保健所や保健センターだけでなく、廃棄物処理場や食品安全管理センターなど、多岐にわたります。
座学と並行で学習を深められる!

衛生学・公衆衛生学の授業を受けているなかで実習先を訪れるため、実習後は座学にもより身が入ります。実習先で得た知見については後日レポートにまとめ、興味を抱いた分野についてより深く調べていきます。
実習の成果を全員が発表できる!

レポートにまとめた内容をもとに、スライドを作成します。班ごとに持ち回りで全員が発表を行い、発表の後は活発な質疑応答が行われるため、発表する側も聞き手もプレゼンの練習になります。
INTERVIEW 授業について先生にインタビュー
「集団の健康を守る」ための仕事について
具体的なイメージを掴んでほしい
もともとこの実習は、私が福岡大学医学部にいた頃に行っていた医学部と地域の保健所との交流を、愛媛大学でも行いたいと考えたことがきっかけで始まりました。全員参加で保健所訪問ができる医学部の授業は、全国でも珍しいようです。
当初、県内の施設に医学生の受け入れをお願いした時は、先方も戸惑われたようでした。しかし、現場では慢性的な医療職不足や、公衆衛生医師の高齢化といった問題を抱えているため、学生のうちから公衆衛生の現場の実情を知る重要性を示したところ、ご協力いただけることになりました。
この授業のねらいは、公衆衛生の現場での業務を学ぶことに加え、現場で働く方々の姿を見て、「患者さん」になる前の「地域の人」の健康がどのように守られているか、具体的なイメージを掴むことにあります。実習を導入したことで学生の公衆衛生の試験の点数が上がったというデータもあるため、現場の仕事を見て、自分なりに調べたりすることで、勉強にも身が入るようになるのかもしれません。
多くの医学生は将来、臨床医として働き、目の前の一人の患者さんのために最善を尽くすことでしょう。そうした医療が大事なのは言うまでもないですが、それとは別に、「集団の健康を守る」という医療があることも頭に置いてほしいと考えています。また、医師として活躍できる場は臨床以外にもあることを、医師免許取得後も覚えておいてほしいのです。私は、人には天職があらかじめ決まっていると思っているのですが、そこにたどり着くためには、まずは色々な選択肢を知っておくことが重要だと考えます。この授業が学生にとって、そういったきっかけの一つになればと願っています。

三宅 吉博先生
愛媛大学医学部 疫学・公衆衛生学講座 教授
学生からの声
精神保健の現場の雰囲気を体験できました
4年 山本 知生

僕は精神保健福祉センターに行きました。引きこもりの方の家族の相談会に参加し、ご家族の方のお話を聴いたり、相談の様子を見たりすることができました。また、それ以外の職種の業務やセンター設備などについても説明を受け、精神保健の現場の雰囲気を体験できました。
地域医療の実情も知ることができました
4年 森野 恵

私は地域の保健所に行きました。新型コロナウイルス感染症の電話対応の様子を目の当たりにしたほか、腎臓病の予防のための栄養指導に同行したり、地域の三つの診療所を一手に引き受ける医師からお話を伺ったりしました。地域医療の実情も垣間見え、見識が深まりました。
産業医のイメージが明確になりました
4年 山中 凱渡

私は工場に行き、産業保健の現場を見学しました。騒音対策を体験したり、張り紙などの安全面の注意喚起を見たりしました。食堂見学では、従業員の方々の健康管理を食事面においても支えているのだとわかりました。産業保健に対し、具体的なイメージを抱けるようになりました。
※取材:2022年7月
※取材対象者の所属は取材時のものです。



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