グローバルに活躍する若手医師たち
日本医師会の若手医師支援
JMA-JDNとは
Junior Doctors Network(JDN)は、2011年4月の世界医師会(WMA)理事会で若手医師の国際的組織として承認されました。JDNは、世界中の若手医師が情報や経験を共有し、未来の医療を考えて行動するための画期的なプラットフォームです。日本医師会(JMA)は2012年10月に国際保健検討委員会の下にJMA-JDNを立ち上げました。これまで若手医師の集まりは学会や医局、地域、NGOなどの枠組みの中でつくられてきました。JMA-JDNは、多様な若手医師がそれらの枠組みを超えて、公衆衛生や医療分野において自由に自分たちのアイデアを議論し行動できる場を提供したいと考えています。関心のある方は検索サイトやFacebookで「JMA-JDN」と検索してみてください。
今回は、JMA-JDNの若手医師より、海外の若手医師へのインタビュー記事と、世界医師会(WMA)JDN October 2021 Biannual Meetingの報告を寄せてもらいました。
COVID-19パンデミックとカナダ公衆衛生医師
―海外若手医師より―
北海道大学病院 呼吸器内科 佐藤 峰嘉
海外若手医師のパンデミックにおける体験をお伝えします。
世界医師会Junior Doctors Networkの代表を務め、カナダのケベック州で公衆衛生医師として働くYassen Tcholakov先生にお話を伺いました(2021年8月)。Tcholakov先生は、2020年にマギル大学の公衆衛生と家庭医療の5年間のレジデンシーを終え、現在は同州北部に位置するヌナビク地方のDepartment of Public Healthで感染症行政に携わっています。
ヌナビク地方の住民は主にイヌイットと呼ばれる先住民で、日本の国土より大きい44万平方km以上の広大な土地に1万2千人弱の人々が暮らしています。医療資源の限られた遠隔地であるという土地柄ゆえに、そこで感染が拡大することは避けなければならず、渡航者のスクリーニング、隔離など水際対策が厳格に実施されたそうです。Tcholakov先生自身も、現地に出向くのではなく、リモートで働くことが通常とのことでした。
ワクチン接種については、当初、特に若い世代が重症化リスクを軽く見積もったため、接種が進みませんでしたが、それに加えて先住民のコミュニティでは医療スタッフが先住民でないことによる信頼の得にくさや、遠隔地から優先的に接種を開始したため実験台にされるのではないかという懸念を持たれたという困難があったそうです。
今後は、ワクチンパスポートや医療スタッフの接種義務化等によりワクチン接種がいっそう加速していくだろうということ、今回のパンデミックにより遠隔医療が進み、保健サービスの提供に新たなアプローチがとられるようになるであろうとお話ししていました。
ご協力いただいたTcholakov先生に感謝申し上げます。

Dr.Yassen Tcholakov chairperson, WMA-JDN
2012年北海道大学卒。北海道内で総合内科・呼吸器内科研修後、現在同大学で呼吸器内科診療・基礎研究に携わる。
message
みんなでパンデミックを乗り越えましょう。
世界医師会(WMA)JDN October 2021
Biannual Meeting 報告
帝京大学医学部附属病院・循環器内科
JMA-JDN 国際担当役員 岡本 真希
WMA-JDN Biannual meetingがオンラインにて行われました。9月18日にはWMA Leadershipから新会長のHeidi Stensmyren先生、現会長のDavid Barbe先生、WMA事務総長のOtmar Kloiber先生、WMA理事会議長のFrank Montgomery先生、準会員会議議長のJoe Heyman先生をお招きして、互いに質問し合ったり率直に意見を交わしました。2020~2021年WMA-JDN活動報告では、医療倫理、プライマリーヘルス、Antimicrobial Resistance、Global Surgery、気候変動をテーマとしたWorking Groupの報告、WMAのSocial Media使用に関する提言、準会員のe-HealthやMedical Technologyの作業部会への貢献など、若手ならではの強みを生かして多方面で活躍する様子が全体で共有されました。
10月9日には“Discrimination and Racism”をテーマに、4名のメインスピーカー(元WMA会長で健康の社会的決定要因などで知られる公衆衛生の第一人者であるProf. Sir Michael G. Marmot先生、オーストラリアの総合診療医であるMukesh Haikerwal先生、フェミニスト活動家でもあり健康政策にも詳しいShehnaz Munshi先生、そしてMassachusetts General HospitalからFatima Cody Stanford先生)をお招きしてご講演いただきました。中でもSystemic Racism(制度的人種差別)の例はとても印象に残りました。教室の前方にあるゴミ箱に丸めた紙屑を投げ入れるという課題で、一見全生徒に一律の機会が与えられているようでも、実際は前の席に座る生徒と、一番後ろの席から投げ入れる生徒では全く成功率や難易度が違うという例をご提示いただき、日々気付かぬところで起こる差別の数々に警鐘を鳴らしてくださいました。また差別は、社会・経済的不平等性、Gender、Sexuality、人種、障害、移民など様々な個々のアイデンティティが複雑に交差し合って起こるというIntersectionalityの考え方や、Social or Structural determinants of health (健康の社会的または構造的決定要因)として、健康格差や医療資源へのアクセスの不平等性にもつながることを改めて学びました。差別は社会全体が作り出すものであり、私たち一人ひとりが他人事と思わず真剣に考えていくことの必要性を感じました。

佐賀大学卒、洛和会音羽病院にて研修。2017年から4年半ドイツに留学&臨床医として勤務。2021年9月帰国。
message
帰国しました。日本の医療の手厚さに心温まりつつ、働き方改革の遅れを痛感しています。
information
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※寄稿:2021年11月
※先生方の所属は、寄稿当時のものです。



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