FACE to FACE
宮地 貴士 × 菅野 勇太

菅野(以下、菅):宮地さんは、「ザンビア・ブリッジ」というザンビア共和国の無医村に診療所を建設する企画を立ち上げ、数年前から取り組まれていますよね。僕はもともと国際関係に興味があり、入学以前からお話ししてみたいとずっと思っていたので、宮地さんが講演会を主宰された際に自分からお声掛けしました。それをきっかけに、まだ何の経験もない1年生の僕を公衆衛生に関する研究に誘ってくださった時は驚きました。
宮地(以下、宮):昨年、公衆衛生学講座の野村恭子先生の下で、秋田県内のトラック運転手の健康問題に起因する交通事故に関する研究を始めたのですが、人手が足りなかったため、積極的で、しっかり物事を考える菅野くんが手伝ってくれたら良い結果を出せるのではと考えました。また、まだ研究に携わった経験のない1年生の客観的な視点が加われば、意外なアイデアがもらえるのではないかとも思ったのです。
菅:研究テーマはどのように選んだのでしょうか?
宮:以前から野村先生のもとに、トラック運転手の健康に関して相談が来ており、そのテーマを僕が扱うことになりました。病院実習でトラック運転手の方から病気の話を聴くこともありましたし、父と兄がバスの運転手をしていることもあり、僕自身、関心を持っているテーマでもありました。
菅:最初はどのように研究を進められたのでしょうか?
宮:提供されたデータを活用することから始め、事故が起きる経緯や要因を明らかにし、介入の方法を探っていきました。しかし研究を進めるなかで、データを扱っているだけでは何か空回りしているように感じ、以前から知り合いだった近所のトラック運転手さんにお話を聴くことにしました。
菅:なぜそのように考えたのでしょうか?
宮:ザンビアでの経験から、当事者が何を必要としているのかを正確に理解しなければ、問題解決の過程で齟齬が生じることがあるという実感があったからです。直接お話を聴くなかで、当初最も大きな課題と考えていた「不眠」はトラック運転手の抱える多くの問題の一つでしかなく、事故が起こる要因を様々な角度から検討しなければいけないということがわかり、研究に活かすことができました。
菅野くんは研究室に参加してみて、どうでしたか?
菅:まだ学生なのに、こんなに複雑なデータを扱って英語の論文を書くことができるのかと、ただただ驚きでした。必死についていくつもりで頑張って、少しずつ研究のことを学んでいったと感じています。
宮:そんな菅野くんも、僕が筆頭著者となる論文を手伝ってくれた後、1年生でいきなり筆頭著者となる原著論文を書きましたよね。とてもすごいことです。
菅:身近に宮地さんという先輩がいたので、頑張ることができました。授業などと並行して進められるのか不安もありましたが、今は大きな達成感があります。あの時、自分から宮地さんに声を掛けて良かったです。
宮:実は僕も最初に海外で活動することになったきっかけは、全く面識のない憧れの団体の方にFacebookでコンタクトを取ったことでした。自分の活動に興味を持ってくれている人から声を掛けられて嬉しくない人はいないと思います。もちろん声の掛け方に工夫をすることも大切ですが、興味のある相手には、まず好意を伝えてみることが肝心なのでしょうね。
宮地 貴士(秋田大学6年)
1997年東京都北区生まれ。順天高校卒。 ザンビア共和国のマケニ村で診療所建設や医学部進学を支援する奨学金を運営。大学では公衆衛生学講座の野村恭子先生の下、トラック運転手の事故予防をテーマに論文の執筆や講演会に取り組む。今春から秋田県横手市にある平鹿総合病院で初期研修予定。
菅野 勇太(秋田大学2年)
もともと僕は研究にあまり関心がなかったのですが、今回宮地さんに誘っていただいたことで、研究を通じて、患者さんが抱えている問題の本質に迫ることができるのだとわかりました。今、研究室という全力を注いで頑張ることができる場があるのはとてもありがたいですし、やりがいを感じながら、どんどん成果も出すことができて楽しいです。今後は、先輩の真似をするだけでなく、自分はどういう医師になりたいのかということもしっかり考えて活動していきたいです。
※取材:2021年10月
※取材対象者の所属は取材時のものです。



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