医学生に向けて

全国医学部長病院長会議  会長
森山 寛(東京慈恵会医科大学附属病院 院長)

 医療の高度化、専門化が進むとともに医療現場は複雑化し、医学生時代に学ぶべき内容も、従来以上に幅広く膨大なものとなっています。超高齢化社会や情報化社会の到来によって国民の求める医療ニーズは多様化し、医療機関への依存度、需要、要求は年々高まり、震災と原発事故の影響がこれに拍車をかけています。大学附属病院では高度・先進医療の研究・開発・実践を、また一般病院や診療所においては地域に密着した形でそれぞれの機能・役割を果たし、相互に補完しあいながら医療ネットワークを構築することにより、国民の保健・医療・福祉へ貢献をしています。

 医療や医学は単なる自然科学ではなく、人文科学や社会科学を包括した実践的総合科学です。医学生の皆さんは偏差値だけを基準にして医学部を選択したのではなく、臨床や研究を通じて人の生命に深く関わり、人類の健康や福祉に貢献するといった高い志を充分に自覚し医師を目指したと信じています。また医師は社会的財産であり、医療・医学の実践により公のために奉仕するという基本概念も認識されているはずです。

 現在の卒前教育は毎年改良を重ね充実しております。皆さんは、6年間の一貫・統合型カリキュラムの中で、大学病院における診療参加型臨床実習などを通じて、基本的臨床判断能力を身につけます。また地域の病院、診療所、在宅での実習を組み合わせた地域基盤型教育を導入している大学もあります。医師としてのコミュニケーションスキルや人間力、モチベーションを高める不断の努力は極めて重要です。すなわち医療とは医師、看護師だけではなく、それ以外の数多くの職種の人たちが患者さんを中心に、チームを組んで行うものなのです。一緒に働くすべての人たちの思いを理解してこそ質の高いチーム医療の提供が可能になります。そして卒前のみでなく、初期臨床研修やその後の専門医教育など卒前・卒後の一貫したカリキュラムを通じて、総合的な診療能力を備えた専門医へと成長します。

 皆さんの卒業後の進路は多様です。病院勤務や診療所など臨床医として患者さんを診るほか、研究者として医学を探求していく道、また医療制度改革に携わるために医療行政へ進む道、臨床医となっても大学病院において研究を続ける道など、そのキャリアパスは様々ですが、どのような道を歩もうとも、医療技術・技能向上のため日々研鑽を積むとともに大切なことは、人の生命を預かる責任の自覚と、病める人に対する医療者としての心を磨くことです。そして何よりも、世界に冠たる日本の医学・医療の将来を自ら背負っていく気概を生涯にわたり持ち続けてほしいと願っています。

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