地域医療ルポ
「被災地の医療を立て直す拠点をつくる」

宮城県石巻市 石巻赤十字病院 石井 正先生

宮城県石巻市
宮城県東部沿岸地区の中核都市。震災で最も甚大な被害を受けた地帯に位置し、死者・行方不明者は3,927名。地域の医療機関のほとんどが機能停止し、市内で第二の規模だった石巻市立病院も津波で機能を失った。
地域医療ルポ(宮城県石巻市)

大きな揺れが石巻の街を襲った時、石井正先生は肝臓手術の最中だった。災害担当の任に就いていた先生は、すぐにスクランブル体制の指揮を執ることとなり、全国各地から駆けつけたDMATなどの医療チームの受け入れを、行政や医療機関等と調整しながら必死で行った。この医療支援のコーディネートに関わったことが、石巻地区の病院・医師会・行政など、様々な人たちと共にこの地域の医療について考える機会となった。

「沿岸部はどこも中核病院がやられてしまいました。復興と言っても、町に頼れる医療機関が無かったら安心して生活できない。被災した病院の再建は、とても大切な仕事なんです。うちは宮城県東部の基幹病院ですから、リーダーシップを執って行かないといけない。僕は普通の外科医をやってきましたが、震災によってこの地域の医療や行政と深い繋がりができたのも、縁なのかなと思います。私にできることがあるなら、この地域の医療を再建する手伝いができれば、という思いはあります。」

甚大な被害を受けた地域の医療を再建するには、若い医師を呼び込むことも大切だ。しかし、最新の医療についていけなくなる、一度地方に出たら戻れない、といった不安が、若手を地域医療から遠ざけている現状もある。

「僕も地方の小さい病院での勤務を経験しました。手術の件数は少ないけれど、自分で麻酔もしないといけない環境で、得たものは大きかった。けれど、地方の病院では若手が新しい技術を学べない、という不安があるのも事実でしょう。実際、地方の小さい病院にいると孤独で、目標になるような先輩も近くにいませんから、勉強する機会も意欲も湧かなくなりがちです。今は『地域のために身を捧げろ』という時代ではありませんから、若い医師を増やすためには、地方でも新しいことを学び、スキルアップできる仕組みを確立する必要があると思います。」

そこで、石巻赤十字病院は、石巻地区のセンター病院として、医師会・東北大学・行政などと連携しながら、地域医療者のスキルアップのための機会を提供したり、マンパワーが不足している地域には自院の医師を派遣したりする仕組みを模索している。

「地方の病院で働いていても、例えば週に1度はうちのような基幹病院に出て最新医療を学ぶ機会があれば、若手も安心して地域医療に携わることができます。そういった仕組みの確立には様々な調整が必要ですが、地域医療の復興に若手を巻き込んでいけるよう、当院がリーダーシップを執って進められれば、と感じています。」

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