
患者支援団体
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長
山口 育子さん
医療者と患者の協働のために
昨今の医療界では、患者の自己決定を重視する「患者中心の医療」に注目が集まっています。患者による自己決定の場面においては、医師が一方的に決めるのではなく、患者に全てを任せるのでもない、両者の「協働」が必要です。そのためには、医師・患者の双方に、高いコミュニケーション能力が求められます。
今回は、患者と医療者のよりよいコミュニケーションの構築を目指す患者支援団体COMLの理事長、山口育子さんにお話を伺いました。
「COMLが活動を始めた1990年当時は、治療に関する決定は、医師に全てお任せし、患者は医師の言うことに従うのが当たり前でした。私自身も90年にがんを患ったのですが、主治医は病名や治療方針について話してくれませんでした。
COMLは、『賢い患者になりましょう』を合言葉に、患者が主体的に医療へ参加できるよう支援を続けてきました。医療者と患者が、対立するのではなく、互いの役割を果たしながら協働する関係を築くことが、私たちの目標です。」
患者の自己決定を支える
医学の発展によって治療の選択肢が増えたことや、社会が情報化したことなどから、90年代以降、医師から患者への情報提供をめぐる状況は大きく変化しました。しかし、今も昔もCOMLには、医療に関する自己決定ができないという患者からの相談が多く寄せられるそうです。
「専門的な情報だけをたくさん与えられて、あとは自分で治療の方針を決めて下さいと言われても、医療の知識がない患者には難しく、精神的な負担が大きいものです。患者は医師に、専門的な情報の理解を助け、治療方針について共に考えてもらいたいと思っているのです。
私が医師向けに講演をするときには、患者との情報の共有のために、医師からの説明をどう受け止めたのかを、患者自ら言語化してもらうことを紹介しています。そうすることで、認識の食い違いが防げます。例えば、治療や薬が『よく効く』というときのイメージは、医師と患者で大きくずれていることがあるんですよ。
また、重大な病気の告知を受けた患者は、頭が真っ白になってしまって、その後の説明をしっ
かり受け止められないこともあります。重大な病気についての説明は、二度に分けて行うのも良いでしょう。
インフォームド・コンセントと聞くと、医師から患者への情報提供を行う場面を想像すると思いますが、今後医師となる医学生のみなさんはもう一歩踏み込んで、患者と協働し、理解を助け、共に考える医師になってほしいと願っています。」



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