日本医師会の取り組み
医師主導による医療機器開発への支援
臨床の視点を機器開発に
医療に限らず、新しい道具や機械の開発や実用化には、現場で働く実践者のアイデア・経験は欠かせません。しかし現場で活躍する臨床医の多くは日常診療に手一杯で、なかなか道具や機械の開発に関わる余裕はありません。そのようななかで、我が国は大量の医療機器を海外から輸入しています。日本の医療機器市場の規模は世界第2位ですが、その金額の半分近くは輸入によって占められ、多くの医療費が国外に出ていっています。また、日本人の体格や生活様式に即した医療機器が少ないことも課題になっています。
このような状況を改善すべく、日本医師会では、「医師主導による医療機器の開発・事業化支援事業(JMAMDC)」を6月に立ち上げ、臨床医による医療機器の開発や事業化について、そのきっかけとなる窓口の提供と事業化への支援を行っています。新しい医療機器や先進治療などの開発を促進し、国民により質の高い治療技術を提供することを目的としています。
プロが事業化を支援する
支援の対象になるのは、メスやピンセットなどの小物から、ペースメーカーなどの治療用機器、MRIなどの診断用機器、画像データの処理等を行うプログラム等、薬機法で定められる全ての医療機器です。
まずはアイデアや構想を持つ医師がJMAMDCのWEBページ等から登録を行い、様々な観点からプロが「目利き」を行います(ステップ1)。医療上の有用性はあるのか、特許は取得可能か、その道具・機械が使われる市場は大きいか、開発は実現可能でコストパフォーマンスは合うのか、薬機法規制に抵触しないか、競争相手に対して優位性があるか、販売・普及の難易度…などの項目をクリアすると、個別面談によりその後の事業の進め方が決定されます。9月末現在、既に70件を超えるアイデアが登録されています。
続く「ステップ2」では、アイデアを出した医師の希望を踏まえながら、具体的な事業化の支援が行われます。どんなに良いアイデアであっても、試作品を作るメーカーとの提携や開発の事業化計画の策定、特許申請などの知的財産管理など、様々な支援がなければ、製品化することはできません。「現場の医療はわかるけれど、製品開発のことはわからない医師」のアイデアを形にするための、総合的な支援の仕組みがJMAMDCなのです。
「アイデアを持っていながら診療に追われている多くの医師に、この支援事業を活用していただき、日本独自の質の高い道具や機械の開発につながることを期待しています。
最近の医学生には、ビジネスや起業に興味がある人もいると聞きます。今後医師として現場に出て行くなかで、診療に使う道具や機械にも関心を持ち、ぜひアイデアを温めておいてほしいですね。若いみなさんは頭が柔らかく、日常業務に慣れてしまっているベテランが当たり前と思っていることにも違和感を持ち、新たなアイデアを生む力がきっとあります。今のうちからアイデアを溜めておいて、医師になった暁には是非チャレンジしていただきたいと思います。」(羽鳥裕 日本医師会常任理事)



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