
東京消防庁 救急管理課(救急救命士)
宍戸 愛水さん
救急医療の最前線で
交通事故で骨折して動けない人がいる。高齢者が脳梗塞で倒れた。そんな緊急の119番通報が、東京都だけでも42秒に1回発生しています。そうした重症患者の命をつなぎながら救急科の医師のもとへ運ぶ責務を負うのが、国家資格である救急救命士です。今回は東京消防庁の宍戸愛水さんにお話を伺いました。
119番に通報があると、災害救急情報センターから最寄りの救急隊に出動要請が出されます。東京都では、出動する救急隊に最低1名の救急救命士が含まれます。現場に到着した救急救命士は患者に必要な救急救命処置を施し、病院へ搬送します。搬送先は傷病状態に対応した最も近くの病院を探しますが、持病のある患者はかかりつけの病院への搬送も検討します。
情報をつなぐ・命をつなぐ
患者の命をつなぎ、病院まで搬送するために、救急救命士は医師の指示のもとで「特定行為」と呼ばれる医療行為を行うことを許されています。例えば心肺停止状態の場合、災害救急情報センターに常駐する救急隊指導医に指示を仰いだうえでアドレナリンの投与を行います。
また、救急救命士の重要な役割として、現場での情報収集も挙げられます。現場でしか得られない情報を集めて申し送ることで、搬送後に医師が行う診断・治療をサポートするのです。現場に、食べかけのご飯があればそれを詰まらせた可能性を考えますし、薬の包装が落ちていれば、持病を疑います。
「切迫した状況でご家族など周囲の人も混乱していることも多く、救急救命処置と平行して情報収集を行うのは大変です。しかし、私たちが見過ごした情報は医師に伝わりません。診断・治療を行うために医師がどのような情報を必要とするのかを理解し、それらを適切に収集することが救急救命士には求められます。」
1秒でも早い搬送のために
救急車両内から医療機関に連絡を行い、搬送先を探すのも、救急救命士の仕事です。連絡を受けた病院は、ベッドの空きやスタッフの稼働状況を確認して受け入れの可否を返答します。
「救急搬送においては、一分一秒が患者さんの命を左右します。病院に連絡して傷病状態を説明したあとは、回答を待つしかないのです。病院側の事情も分かりますから、全ての患者さんを受け入れてほしいとは言いません。しかし、一刻も早く返答がほしいのです。断って頂ければ、すぐに次の病院に連絡できますので、とにかく早く返答がほしい。医学生のみなさんが将来救急搬送を受け入れる立場になったときには、このことをぜひ思い出してほしいです。」
※この記事は取材先の業務に即した内容となっていますので、施設や所属によって業務内容が異なる場合があります。



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