日本医師会の取り組み
臨床研修医の医師会費無料化(前編)
医師会は、若いみなさんの力を求めています
早期からの医師会活動参加
みなさんの中で、医師になったらすぐに医師会に入会しようと考えている人は少ないでしょう。研修医や勤務医のうちは関係ないと思っている人も多いと思います。しかし実は、医師会員の半数近くは勤務医であり、臨床研修医も医師会に入会し医師会活動に参加できることをご存知でしたか?
日本医師会は、2015年度より臨床研修医の日本医師会費を無料化しました(※)。この背景には、広く門戸をひらき、より多くの研修医や若手の勤務医に医師会活動に参加してほしいという日本医師会の思いがあります。
健康な暮らしを支える
医師会活動の大きな使命のひとつが、国民の生涯にわたる健康で文化的な明るい生活を支えるための、地域に根ざした活動です。各地域医師会が中心になり、各種健診や予防接種などの予防医療や一次救急医療体制の維持などを実施しています。
現在、地域包括ケアシステムの構築が各都道府県で進められていますが、地域の健康を支える仕組み作りはわが国全体の課題です。各大学医学部には地域枠なども設けられており、今後は若い頃から地域に貢献していく使命を持った医学生や研修医も増えていくと考えられます。
地域包括ケアシステムの中では、地域の中核病院とかかりつけ医は適切に連携し、患者さんを一緒に支えることになります。そこでのスムーズな連携のためには、勤務医と開業医が「顔の見える関係」を築くことも大切です。各地域医師会が主催する勉強会などが、関係作りの機会になっている例も多くあります。
安心して診療に従事できる
医師が安心して診療に従事できる環境を整えることも医師会の重要な役割です。日本医師会では、医師の診療・生活を支えるための様々な事業を行っています。
例えば、医療事故などが起こってしまった場合、金銭面などで紛争解決のサポートを受けることのできる医師賠償責任保険を整備しているほか、医療事故調査制度の創設を働きかけ、医師がいたずらに刑事責任を問われないように組織をあげて取り組んでいます。
また、時に過酷な勤務を強いられることもある若手医師が疲弊することを防ぐため、勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会を設置し、管理者に働きかけ、勤務医の心身の健康を支援する啓発活動も行っています。さらに、女性医師支援センターを設置し、女性医師が医師としてその使命と責任を継続して果たすことができるよう応援しています。その他、生涯教育制度を整備し、忙しい医師が生涯にわたって自己研鑽を積むための機会も提供しています。
「実は、医療界は日本の人口ピラミッドと逆で、若い人のほうが多いんです。2015年度の臨床研修医の採用実績は過去最多の8244人。それだけの人数が医師会に入会して声をあげれば大きな力になることは間違いなく、日本の医療政策にみなさんの意見を反映させることができるとも言えます。
医師会員になることによって受けられるメリットも、これまではあまりわかりやすく説明されてきませんでした。今回の会費無料化をきっかけに、医師会活動の意義とメリットを積極的に発信し、より多くの方に医師会活動に参加していただきたいですね。」(笠井英夫日本医師会常任理事)
※臨床研修期間中、日医医師賠償責任保険に加入しない臨床研修医(C会員)は年額6000円の会費が無料となります。医賠責に加入する臨床研修医(A②C会員)は3万3000 円(医賠責保険料部分のみ)の負担となります。
医師会は三層構造になっており、日本医師会に入会するためには、都道府県医師会、郡市区等医師会にも入会する必要があります。今回、臨床研修医の会費が無料になったのは日本医師会費のみですが、各医師会に働きかけを行っており、会費が無料になっている都道府県医師会、郡市区等医師会もあります。
日本医師会の取り組み
臨床研修医の医師会費無料化 (後編)
message医師会組織強化検討委員会より医学生のみなさんへ
医学生時代から積極的に交流を深めています
小山田 雍 秋田県医師会会長 医師会組織強化検討委員会委員長
秋田県医師会では、医学生との交流が組織や活動への理解を深めると考え、次のような取り組みを行っています。医学生への講義では、身近な問題を取り上げながら医学生へ期待のメッセージを伝えています。大学の学園祭に参加し、物品、機器の支援もしています。スチューデントドクター認証式では5年次の推薦者に県医師会から奨学賞を授与します。新臨床研修医の歓迎会では、県知事、医学部長、附属病院・研修病院の院長や指導医が出席し、県・大学・医師会が一体となって地域医療の担い手への期待を表します。これらのことが、医師会入会の動機を高めると考えています。
若い世代と力を出し合って、課題を解決していきたい
近藤 邦夫 石川県医師会会長 医師会組織強化検討委員会副委員長
日本では、毎年約8,500人の研修医が誕生しています。みなさんにはしっかり研鑽を積んでいただき、次の日本を支える医療人になることを心から願っています。今、日本は世界が経験したことのない、超少子高齢社会に突入しており、世界は、日本がいかにこの問題を乗り切るかを固唾を飲んで見守っています。5年、10年後の世界は大きく変わっているかもしれません。英知を出し合ってこれらの課題を解決していきたい。医師会は、日本の医療を支え守っていくために、若いみなさんの力を必要としております。



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