海外をフィールドに熱帯医学を学ぶ
順天堂大学 熱帯医学研究会
熱帯医学研究会(以下、熱医研)は勉強会および東南アジアでの研修を目的として医学部2~6年の約20名が所属する部活で、学校法人順天堂の理事長である小川秀興先生が熱医研の実質的な創始者です。
1960年、医学部5年の学生が海外に行く団体を作りたいと内科学教授であった塩川優一先生に依頼しました。翌年塩川先生を引率教員として、学生4名が東南アジア調査団としてマラヤ連邦(現在のマレーシア)で初めての研修を行いました。その後研修はタイ・シンガポール・ラオス・ベトナム、さらには沖縄県でも行われ、現在に至ります。
熱医研は、「グローバルな視野を持った人材を目指す」、「研修を通して熱帯医学やチームの協調性を学ぶ」、「英語をツールとして海外の医学生と対等な交流をする」という3つのミッションを掲げています。
続いて研修について具体的に説明します。熱医研では研修に参加する条件としてTOEFL iBT65点以上という語学力ラインを設けています。この点数が海外研修に必要な最低限のレベルだと考えているからです。また日々の熱帯医学学習にも力を入れています。近年の研修先は主にシンガポールとタイです。シンガポールではシンガポール大学を訪問し、施設見学や医学生との交流を行います。
小川先生はアジアの皮膚科医療に関する問題を解決するため、1976年にタイ国政府やJICAなどに協力を仰ぎInstitute of Dermatology(IOD)という医療・研究施設で皮膚科医専門育成コース(Diploma Course)を立ち上げました。
熱医研の学生はバンコクの関連施設への訪問に加えて、小川先生が毎年タイで行っておられる講義、開講式や卒業式にも参加しています。その他ハンセン病や、患者数が増え続けるHIV/AIDSを専門とする施設を見学したり、順天堂大学の協定校であるマヒドン大学・チュラロンコン大学・チェンマイ大学を訪問し、シンガポール大学と同様に施設見学や医学生との交流を行います。また沖縄研修では、シンガポール・タイ研修の事前学習として、夏季休暇中に琉球大学やハンセン病療養所である愛楽園を訪問し、熱帯医学を学ぶとともに国際性豊かな人材養成を目指しています。
熱医研はミッションを完遂するため、今後も海外をメインフィールドとして活動し続けます。世界を牽引する逸材が、より多く熱医研から輩出されることを信じています。
文責:順天堂大学医学部 加藤

世界医師会WMAオスロ理事会およびJDN会議報告
祐ホームクリニック/日本医師会JDN 林 伸宇
私は、祐ホームクリニックの林伸宇と申します。日本医師会Junior Doctors Network(JMA-JDN)の一員として、2015年4月16~18日にノルウェーのオスロで開催された世界医師会(WMA)オスロ理事会およびJDN会議に参加して参りました。WMAは111か国の医師会が加盟する全世界の医師を代表した組織です。理事会では、各国医師会の代表が一同に集い、医師とソーシャルメディアの関わり方、備蓄天然痘、性的マイノリティー、貿易協定、高齢社会、モバイルヘルスなど、医の倫理・社会医学に係るテーマについて議論が行われました。今後どのような世界のあり方を目指していくのか、より良い未来のために医師は何をすべきか、各国の代表が真剣に話し合いました。様々な価値観を持った医師が集まって一つのビジョンを創る取り組みには多くの困難を伴いますが、非常に意義のあることだと感じました。実際に、1964年にWMAが採択した「ヘルシンキ宣言」は、今でも最も重要な倫理規範となっています。またJDNは、卒後10年以内の医師が集まって話し合う場で、WMA理事会に議題を提出し発言する権限を持っています。提出議題について話し合うだけでなく、各国の若手医師が情報を交換する貴重な場でもあります。
ヨーロッパでは、国を越えた研修プログラムのデータベース化と研修医の労働時間制限が重要な課題になっていました。前者は、国境を越えて研修プログラムに参加する医師が増えてきていることが理由です。後者は、医療安全もさることながら、女性医師や子どもをもった研修医が増えていることも大きな理由とのことでした。これらのいずれも、若手医師が中心になって仕組みを整備しているということが印象的でした。私は日本のJDNの取り組みとして、地域医療・国際保健・医師のキャリア形成に関するセミナー企画、日韓若手医師交流会、日本医師会勤務医委員会臨床研修医部会への参加について発表しました。
今回の経験を通じて、世界の同世代の医師たちが何を考え、どのような働き方をしているのかをお互いに知ることができました。国境を越えてよりよい未来のために医師が何をすべきなのかを議論するとき、臨床現場での感覚は大いに役立ちました。世界とつながりながら地域で診療を続けていくこと、そして患者さんの生活に近いところで働きながら世界に貢献することに大きなやりがいを感じました。




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