大学紹介

三重大学

【教育】地域医療教育の最前線を行く三重大学

三重大学 医学部 教務委員長 竹村 洋典

先生

人口分散型の三重県は多くの中小規模の地方都市を抱えています。それ故に各々の地域で活躍できる医師を育成するために、三重大学は独創的で先進的な地域医療教育に取り組んでいます。三重大学には寄附による多数の地域医療学講座が地域病院に設立されており、そこに三重大学教員が数名ずつ配置されています。1~2年生はおおよそ毎週半日、三重県各地域の医療・介護施設に伺い、地域医療や福祉事業を患者の立場から体験する研修を行っています。4年生の1月から始まるクリニカルクラークシップにおいても地域の医療機関にて研修を受ける機会が多く用意されています。例えば家庭医療・総合診療の臨床実習は4週間必修で、三重県各地域の中小病院や診療所にて実習を受けます。時に低学年の頃、患者の視線で眺めた医療機関で、医師側の立場で実習を受けることもあります。6年生の選択臨床実習では、4か月の地域医療研修のコースも設置されています。途上国を含む海外における地域医療を体験するプログラムに参加する学生も少なくありません。三重大学は地域医療教育で成果を上げているフリンダース大学など海外大学と学部間協定を締結し、学生や教員の人事交流を盛んに行い、お互いに地域医療教育を充実させております。例えばポートフォリオやシミュレータなどを使用した地域での臨床実習は成果を上げております。三重大学は地域枠学生、奨学金資金を受けている学生が他大学に比べて多く、将来、現実に地域医療に従事する可能性が高い学生が多数います。それ故にそのような学生が地域医療を行う素地を身に付け、また地域での活動を楽しめるようになることを十分に考慮した教育が体系的に実施されています。また、地域での卒後臨床研修・後期研修にシームレスに繋がるよう、卒後臨床研修部門とのしっかりとした連携にも配慮しています。

【研究】地域と国際社会への貢献を目指して

三重大学 医学部 副研究科長 片山 直之

県内唯一の医学部・医学系研究科として、本学は研究によって地域や国際社会に貢献することを目指しています。地方自治体の支援による寄附講座として亀山地域医療学講座・伊賀地域医療学講座・県南部地域医療学講座を設置し、それらを拠点に地域医療学の研究を行うとともに地域で活躍できる総合診療医を養成しています。これらの事業は文部科学省「未来医療研究人材養成拠点形成事業」により支援されています。

特色ある臨床開発研究、臨床研究、トランスレーショナルリサーチ、臨床試験支援システム開発を活発に実践しています。臨床開発研究には北海道文教大学との共同研究である「消化管における直径0.1ミリの超早期癌を診断・治療できる生体染色・多光子レーザ顕微鏡技術の開発」、地元ベンチャー企業と共同で進めている「鳥インフルエンザウイルスにも対応できる次世代遺伝子組み換えワクチンの開発」、「肝内期マラリア原虫の蛋白を標的としたワクチンの開発」、「3D積層造形法を用いた骨腫瘍切除後の骨大欠損に使用するカスタムメイド型生体活性インプラントの作製」があります。臨床研究では、他大学・医療機関と連携して「独自に開発した抗原デリバリーシステムを用いたがんワクチン」と「腫瘍抗原を認識するT細胞受容体遺伝子を導入したT細胞を用いた遺伝子治療」の研究を推進しています。トランスレーショナルリサーチには「CT・MRIアンギオの超解像度技術による空間・時間分解能の向上」と「国際レジストリ研究や多施設臨床研究用クラウド型WEBシステムの構築」があります。臨床試験支援システム開発として「多施設共同臨床試験を支援するWEBの構築」を推し進めています。また、三重県・三重県医師会・三重県病院協会と連携・協力し地域圏での臨床研究をサポートする「みえ治験医療ネットワーク」を構築・活用しています。

【学生生活】地域と海外、幅広い視野で医療を学べる環境

三重大学 医学部 5年 矢藤 有悟
同 4年 中島 麻有里

矢藤:三重大学の売りは、医学科1~2年生対象の地域基盤型保健医療教育です。4~5人が1グループとなって、三重県内29市町のうち一つの市町にある一地区を2年間継続して担当します。1年目に地域の問題を洗い出し、2年目にそれを解決するプロジェクトを実施するという流れになっています。

中島:私は奈良県との県境にある波瀬地区を担当しました。自然が豊かで、住民の仲も良好ということで、住民の生活満足度が非常に高く、課題の発見に苦労しました。2年目は、豊かな自然を生かしてウォーキングを実施したり、住民みんなで地元の食べ物を使った料理を作ったりしました。

矢藤:三重大は海外留学も盛んです。特に6年生は、毎年半分くらいの学生が実習期間を使い海外留学します。実習のワンクールとして行くので単位認定もされて、ほとんど選抜もないので行きやすいですね。他の学年は夏休みを利用して行きますが、三重大が用意してくれる枠は他大学よりも多いので、毎年多くの学生が留学しています。私は去年タンザニアに行って、今年はタイに行く予定です。タンザニアでは、例えば子どもを5~6人産むのが普通であるといった、現地の人々の医療・公衆衛生に関する意識に触れることができて非常に新鮮でした。

中島:あと、三重大では学生の意見を教育に反映させる取り組みも活発です。1・3・5年生の時に、泊りがけで教員と学生でカリキュラムについて議論する会が開催されます。カリキュラムについての要望を学生が伝えるだけでなく、お酒を交わしながら先生方と仲良くなる良い機会でもあります。このように、三重大の学生には多様な選択肢が与えられている、と私は感じています。

※医学生の学年は取材当時のものです。

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