【消化器内科】山内 陽平先生
(千葉大学大学院医学研究院 消化器内科学)-(前編)

――山内先生はなぜ消化器内科を選ばれたのですか?
山内(以下、山):研修医になった時点では、進路は全然決めていませんでした。ぼんやりと整形外科は考えましたが、むしろ消化器内科は候補から最も外れているくらいでした。領域が膨大ですから、習得するのは困難に思えて敬遠していたんです。でも、臨床研修で実際に回ってみると、疾患が非常に多いことを、「分野が多岐にわたっていて興味深い」と思うようになりました。内視鏡や穿刺、カテーテルといった、手技の豊富さも魅力でした。特に興味を引かれたのが肝臓カテーテルです。ただ、どの科に進むかはぎりぎりまで迷っており、最終的に決断したのは、2年目の10月頃です。
――専門研修の様子をお聞かせください。
山:千葉大学の医局では、レジデントは基本的に市中病院で修業して、消化器内科に必要な基本的な手技を習得します。
3年目はまず船橋市立医療センターに半年、次に大学病院に半年勤務しました。千葉大では、色々な手技を比較的早めに経験させていただけます。胃カメラから始めて、大腸や胆膵内視鏡も教えてもらいました。胃カメラは器具を押せばそのまま入っていきますが、大腸の場合、腸が伸びてしまってなかなか器具が入っていかないため、習得が大変でした。また、主治医として病棟も担当していました。
4年目はさいたま赤十字病院の肝・胆・膵内科に赴任しました。症例が非常に多く忙しかったのですが、いい修業の機会だと考え、積極的に多くの患者さんを担当するようにしていました。肝臓がん、膵臓がんをはじめ、総胆管結石などの良性疾患のコモンディジーズをひと通り診ました。さいたま赤十字病院は救急が盛んで、胆嚢炎などの急患を診る機会も多かったです。
5年目の半ばに、大学院で基礎研究をしないかとお声がけいただき、大学に戻りました。現在は研究と臨床を並行して行っています。
千葉大学の消化器内科は消化管・肝臓・胆膵とグループが分かれており、今は消化管グループに所属しています。内視鏡治療の入院患者さんや炎症性腸疾患の患者さんを診ることが多いですね。手技では、胃カメラ、大腸カメラ、腹部エコーなどは一人でやっています。毎日何かしらの検査や手技の予定が入っており、その合間を縫って病棟業務もしています。
――消化器内科のどのようなところに魅力を感じていますか?
山:消化器内科の魅力は、やはり幅広さだと思います。対象臓器の数が多く、疾患や治療法も様々です。内科的なアプローチはもちろん、手技や研究など、興味に合わせて専門性を極めることができるのも良いところだと思います。
個人的には、手技の研鑽を重ねていくのが好きですね。例えば肝臓がんのラジオ波治療では、まず病変部が見やすく、電極針を刺しやすい症例を任されます。そうした症例に慣れてくると、次第に人工胸水や人工腹水を作って針を刺しやすくするなど、ひと工夫のいる処置を任されるようになります。また大腸内視鏡は挿入法にも色々な種類があり、本に書いてある通りに入れられることもあれば、一筋縄ではいかないこともあります。一つひとつ、試行錯誤しながら手技を身につけステップアップする過程には魅力を感じます。
【消化器内科】山内 陽平先生
(千葉大学大学院医学研究院 消化器内科学)-(後編)
――今後の展望をお聞かせください。
山:大学院に入ったところですから、まずはこれから3年間、基礎研究に腰を据えて取り組みたいと思います。7年目頃にサブスペシャリティを決め、その翌年に学位論文を書く、という流れになりますね。
研究内容としては、基礎のなかでも臨床に直結するような分野に興味があります。近年、免疫チェックポイント阻害薬が開発され、抗がん剤治療のあり方がこれから大きく変わっていくと思います。これまで肝臓領域は、手技による治療の研究が進んでいる反面、抗がん剤などの研究は他のがんと比べあまり進んでいません。そうした内科的なアプローチの研究を進めていけたらと考えています。
私はもともと臨床にずっと携わっていこうと考えていたため、研究の道に進むイメージは持っていませんでした。ですが今回、研究の機会を与えていただいたので、研究が自分に向いているかどうかというところから、しっかり向き合って見極めていきたいです。
医学部卒業 | 2014年 千葉大学医学部 卒業 | 卒後1年目 | 東京歯科大学市川総合病院 臨床研修 | どの診療科に進もうか迷っていたので、診療科がまんべんなく揃っていて、回りたい診療科を比較的自由に回れるプログラムを持っていた市川総合病院を研修先に選びました。 |
卒後3年目 | 千葉大学医学部 消化器内科学 入局 船橋市立医療センター消化器内科 | 千葉大学では、肝臓のカテーテル治療は伝統的に消化器内科が担っていました。 カテーテル治療に興味があったこともあり、千葉大学に入局を決めました。 |
卒後4年目 | さいたま赤十字病院 肝・胆・膵内科 | |
卒後5年目 | さいたま赤十字病院 肝・胆・膵内科 千葉大学大学院医学研究院 消化器内科学 入学 | 研究中も外勤の仕事を回していただけるので、最低限の手技は維持できるようになっています。さいたま赤十字病院でかなりの臨床経験を積んだ後、一度臨床から離れて研究に専念するという、バランスの良いキャリアを歩めていると感じます。 |

2014年
千葉大学医学部 卒業
2019年4月現在
千葉大学大学院医学研究院 消化器内科学



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