
医療法人社団碧水会 長谷川病院(臨床心理士)
星野 法昭さん
臨床心理のエキスパート
うつ病や統合失調症などの精神疾患に対して、臨床心理学の知見にもとづき、患者さんの心に寄り添う職種が臨床心理士です。日本には複数の心理職が存在しますが、臨床心理士は臨床心理学系の指定大学院を修了し、試験に合格することで取得できる資格です。臨床心理士の活躍の場は幅広く、医療機関の精神科や心療内科、産科や緩和ケア科などに所属するほか、スクールカウンセラーとして学生の相談に乗ったり、児童相談所や障害者施設で働いています。今回は、精神科病院である長谷川病院で働く星野法昭さんにお話を伺いました。
臨床心理士は知能検査やロールシャッハテストなどの心理検査を行うことで患者さんの心理的資源、つまり知的能力やパーソナリティをアセスメントし、診断や治療に活かします。例えば、医師から統合失調症の疑いと診断された患者さんに臨床心理士が心理検査を行い、その結果をもとに診断を再検討したところ、実はその患者さんは統合失調症ではなく発達障害だとわかったこともあったそうです。
アセスメントが終わると、次は患者さんの状態に合わせた心理療法を行います。そのアプローチは、個人または集団を対象として物事の捉え方を変える認知行動療法や、心の内面で起きていることを患者さんと共に探る精神分析療法など様々です。
「例えば、統合失調症には幻聴が伴うことがあり、医師はそれを薬で治療します。対して臨床心理士は患者さんの認知や感情に働きかけることで、たとえ幻聴があっても、それをどう捉えれば前向きに生きていけるのかを一緒になって考えることがあります。精神疾患は完治が難しく、いったん症状が治まっても再発する可能性の高い患者さんが多い。そのなかで私たちは、患者さんが自分の症状と折り合いをつけ、症状を抱えながらも自分らしく生きるための手助けをしたいと考えています。」

共に、「らしさ」を考える
精神疾患の患者さんは、時として症状に圧倒され、自分の価値や生きる意味を見失ってしまうことがあると言います。臨床心理士はそんな患者さんと信頼関係を築き、自分らしい生き方を探す過程をサポートします。
「患者さんは、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、長い時間をかけて自分らしい生き方を探します。その期間はとても長く、私たちも紆余曲折にずっと付き合う覚悟をして、一緒に進んでいく必要があります。双方にとってしんどいことではありますが、患者さんが『これが自分らしい生き方なのかな』って、ふと気づく瞬間があって、そこに立ち会えるのはやはりこの仕事の喜びなのだと思います。」
※この記事は取材先の業務に即した内容となっていますので、施設や所属によって業務内容が異なる場合があります。



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