第2回医学生・日本医師会役員交流会開催!(前編)
8月22日に東京の日本医師会館において、第2回医学生・日本医師会役員交流会が開催されました。今回の交流会では医師・作家の海堂尊先生や全国各地で活躍する若手医師が集まり、23大学の医学生と熱いディスカッションを行いました。

挨拶
人間の尊厳を大切にする社会
日本医師会会長 横倉 義武
昨年、人間の尊厳が大切にされる社会を実現すべく日本医師会綱領を定めました。「安全・安心な医療提供体制の構築」、「国民皆保険制度の堅守」などの4項目を明記し、その誠実な実行を国民に約束しました。日本医師会は、「国民に安全な医療を提供できるか」、「国民皆保険制度が維持できるか」という2つの原則に照らして、国に提言をしています。将来の医療を支える皆様が、学生時代から日本の医療を考えることが国民医療の向上につながっていくものと思います。
基調講演
1.死因究明とこれからの医学
海堂 尊先生(放射線医学総合研究所重粒子医科学センターAi情報研究推進室長・作家)
死因究明が必要な場合でも、解剖が実施できないために正確な死因が判明しないことがあります。そうした状況を改善すべく、死亡時画像診断(Autopsy Imaging, Ai)の導入を主張してきました。国への働きかけが上手く進まない中、日本医師会はAiの意義に着目し、検討会を開いてくれました。結果、今年からAiを用いて小児死亡症例の原因を究明する厚生労働省のモデル事業が始まりました。問題解決のパラダイムを示してくれるのは、学会や厚労省ではなく日本医師会だと感じています。
2.未来志向の医療体制作り
日本医師会副会長 今村 聡
日本医師会は約30万人の医師のうち55%が加入しており、約半数は勤務医です。地域の医師会員は夜間休日診療をしたり予防接種をしたりと患者・国民の健康を支えています。日本医師会は現場の先生たちが仕事をしやすいように環境整備をしています。若手研究者への医学研究奨励賞を設け、会員への研究助成をしているほか、医賠責保険や医師年金の運用、臨床研修医支援ネットワークの整備などを行っています。若い方にも加入のメリットがあることを知っていただきたいです。
第2回医学生・日本医師会役員交流会開催!(後編)
シンポジウム:
テーマ「日本の医療を考える~これからの『地域医療』には何が求められるのか~」
1.地方中核病院で働く魅力
金子 伸吾先生(済生会西条病院 循環器科医長・心血管カテーテル室長)
循環器内科医として、東京の大規模病院と愛媛県の中核病院で働いてきました。大病院では症例数を重ね、他の先生の助手を務められるメリットがありましたが、地方の中核病院では個人のパフォーマンスが尊重される点にやり甲斐がありまし。しかしそのパフォーマンスを発揮するには、自分がリーダーシップを取ってコアスタッフの育成・院内外のシステム構築などを行う必要があります。学生には10年後・20年後のビジョンを持ち、ぜひ患者さんの需要の高い分野で頑張ってほしいです。
2.地域医療には何が必要なのか
原澤 慶太郎先生(亀田総合病院 在宅医療部)
現代は長生きの時代と言われますが、それは病気を手術で治すだけでは終わらない時代になったことを意味しています。今後は、患者さんの相談にワンストップで応えるサービスが必要です。つまり、どこに相談していいかわからない患者さんのそばでサービスを評価してくれる水先案内人が求められているのです。加えて必要なのは、アドバンス・ケア・プランニングです。患者さんは、自分が将来どういうケアを受け、どういう死に方を望むのかを家族と一緒に話し合い、決定していくことが重要です。
3.母子支援体制の構築と受援力
吉田 穂波先生(国立保健医療科学院 生涯健康研究部 主任研究官)
患者さんに必要なのは、離れた場所からものを言う専門家ではなく、身近なアドバイザーなのだと第一子出産の際に感じ、専門家と患者さんの隙間を埋める仕事をしたいと思いました。日本は子どもの割合が非常に低く、この状況を改善するためにはワンストップで母子を支える拠点の構築が必要です。また個人においては、ひとに助けを求める力、「受援力」が必要だと思います。助けを求めることは相手への敬意・称賛でもあります。助け合い、助けてと言い合える社会を構築していきたいです。
4.学生は医療システムへ参画を
吉本 尚先生(筑波大学 医学医療系 地域医療教育学 講師)
医師として働くなかで、まちづくりに興味を持ちました。三重大学在職時代には公民館を作る事業に参加し、福祉はもちろん消防や救急などインフラの問題解決にも携わりました。今後は住民主体の「ご当地医療」が求められると考えています。これからの医療が発展していくためには、医療者が情報を発信することで非医療従事者を巻き込んでいく必要があります。「市民の感覚を持ちながら医療の知識もある立場」である医学生は、ぜひ医療者と非医療者の橋渡しに協力してほしいです。
総合討論
シンポジスト・参加学生・日本医師会役員による討論。
Q.地域住民を医療に巻き込んでいくためには?
A.医師から見た優先順位と住民の順位は違うことがある。選択肢を提示して、住民の了解を得ながら進んでいく。これからの地域医療に必要なのは、納得感。(原澤先生)
A.タクシーや弁当は地元のものを利用するなど、地域に還元していることをアピールする。ビジネスの観点で、Win-Winの関係を作っていくことが大切。(金子先生)

Q.若手医師が日本医師会に入ることのメリットは?
A.地域のなかで活動するとき、医師会と一緒に協力していくスタイルは有効。会合で先生方と議論できるのは貴重だし、地域で医師会から協力を得られる場面は多くある。(吉本先生)
Q.出産・育児とキャリアの両立に悩む医師が多いが、キャリア継続の秘訣は?
A.早く産め、たくさん産めという2点を、患者さんから学んだ。1人目がお産の道を作るので2人目からは産むのも育てるのも楽。早く産むことが育児を楽にするコツだし、仕事にとってもそれがプラスになる。(吉田先生)



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- 医師への軌跡:西脇 聡史先生
- Information:October, 2014
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- 同世代のリアリティー:子どもを保育する 編
- チーム医療のパートナー:臨床心理士
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- 10号-11号 連載企画 医療情報サービス事業“Minds”の取り組み(後編)
- 地域医療ルポ:島根県隠岐郡西ノ島町|隠岐島前病院 白石 吉彦先生
- 10年目のカルテ:整形外科 八幡 直志医師
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